植物の光合成遺伝子のメカニズムが解明できれば、太陽光と水と二酸化炭素から無限にエネルギーを生むのも決して夢ではなくなる。
このように、遺伝子技術は従来技術と置き換わるというより、これまで考えもつかなかったシステムを可能にする技術といえる。
そのような遺伝子研究は、産業レベルから見た場合には特許戦争に他ならない。
なにしろ、ここでは研究方法として紹介した、制限酵素とプラスミドを用いる遺伝子組み換え技術は、れっきとした特許として成立している。
大学などの研究者が純粋な研究目的で使用するのは無料だが、企業が同じ手法を使うとなると、使用料はもちろん、商品の売り上げに応じた特許料を払う必要が出てくる。
これと同じような特許ビジネスが、遺伝子技術の世界では日常的に行われている。
そして、ますます激しさを増すことも間違いないのである。
あとがき北海道大学医学部の附属病院で、ADA欠損症の遺伝子治療が始まってから約十か月たった1996年5月、5歳になったT君(仮名)は生まれて初めて外で遊ぶことができるようになった。
「他の子供たちと遊んだことがなくて接し方を知らないので、外での集団生活に溶け込めるかどうか」と心配する両親を尻目に、家の近くの砂場で同世代の子供たちと一緒に遊んでいるという。
入院中、T君にずっと付き添って寝起きをともにしてきた母親は、「来年春の小学校入学をひかえて、受け入れてくれる幼稚園があれば少しの期間でも通わせたいと思います」との喜びの手記をマスコミに寄せている。
総括責任者のS教授によると、T君の血液千分の1ミリリットルあたりのリンパ球数はほぼ順調に増加を続けて、4月30日には過去最高となる約5千700個と、数のうえでは正常値(3千~4千個)に達した。
実際にどの程度ADAが活動しているかを示す酵素活性値が低いために、普通の人と変わらないというわけにはいかないが、細菌などにたいする免疫反応で作られる抗体値はほぼ正常を示す。
そのためS氏は「T君が他の子供と自由に遊んでウイルスなどに感染しても心配ない」と判断、その直後に「遺伝子治療によって一定の成果が得られた」と、5月208日の記者会見で治療効果を初めて公に認めた。
「1990年にアメリカのNIH(国立衛生研究所)で行われた治療とほぼ同じ効果がすでに出ている」と強調したのであった。
この後も治療は続けられ、6月下旬に行われた8回目を含めて、合計で11~12回が予定されてこのようなビッグニュースがあった96年5月だが、同じ月に新聞などで報道された主な遺伝子関連ニュースをざっとひろってみると次のようになる。
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